タルト生地のバター配合をどう決めるか
タルト生地のレシピを「バター何グラム」と固定している店は多いと思います。でも実際には、粉のロットが変わるたびに吸水量が変わるし、夏と冬では厨房の温度も湿度も違う。Wild Signal Worksでは、毎回生地を触った感触でバターの量を微調整しています。その判断の基準について書いておきます。
最初のバッチで学んだこと
2019年に店を開けた最初の週、タルト生地がぼそぼそに仕上がりました。レシピ通りに作ったつもりでしたが、バターが足りなかった。修業先の京都の店と岡山では粉が違うので、同じ配合では同じ結果にならなかったのです。近所の方に「もう少し何とかなりませんか」と言われて、翌週から配合を変えました。
その経験から、レシピの数字はあくまで出発点だと考えるようにしました。毎回生地を手で触って、まとまり方と硬さを確認してからバターを足すかどうか判断します。
粉のロットで何が変わるか
岡山県内の製粉所から仕入れている薄力粉は、ロットによって水分量が微妙に違います。乾燥した時期に製粉されたものは吸水量が多く、バターを同じ量入れても生地が硬くなりやすい。逆に湿度の高い時期のものは少しやわらかくまとまります。
新しいロットが届いたときは、まず少量で試し焼きをします。焼き上がりの断面を見て、層の出方とさくさく感を確認してから本番の仕込みに入ります。この作業を省くと、週末の販売分で失敗することになるので、省略しません。
気温と生地の扱い方
夏場は厨房の温度が上がるので、バターが溶けやすくなります。生地をまとめる前にバターを冷蔵庫で硬めに冷やしておく時間を長めにとります。逆に冬は厨房が冷えるので、バターが硬すぎて生地に均一に混ざりにくくなる。そのときは少し室温に戻してから使います。
温度管理は機械でやるより、手で触って判断するほうが早い。数字で管理しようとすると、その日の条件に合わせた微調整が遅れます。
タルト生地の配合に「正解」はないと思っています。毎回の素材と環境に合わせて調整し続けることが、安定した仕上がりにつながります。